吾輩は猫である 改版』(夏目漱石著、岩波文庫ISBN:4003101014bk1

これまで、読んでいなかった。
小学生の頃、祖父に買ってもらった(祖父が好きだった、たしか)のだけど、その時の感想は「冗長で、何が面白いのかわからない」だったと思う。で、途中で挫折した。

だったのだけど、『寺田寅彦随筆集』や『科学者の楽園をつくった男』を読んでいると、『猫』が『猫』がと、良く出てくるので、再び興味を持ち、読みたくなった。寺田がモデルとされる寒月、彼が紹介する論文である「首括りの力学」も面白そうだったし。

で、今回の感想。いくつかの章に分かれていて、「1」はとっても面白かった。猫の視点から人を観察し、猫から見て奇妙な人の行動を露わにする点、猫の生活を語る点。“たかが猫”が、「侮るなかれ」と、大仰に語るのが、何とも小気味よい。またそれが、人の持つ猫のイメージ、「犬と違って人に隷属しない」というイメージと一致しているのがいいのかな。
主に観察されるのは、著者をモデル(というのか)にした苦沙弥先生。かなり、自嘲気味だけど、それでいて明るくて、おもしろい。
「2」以降になってくると、そういう「猫の視点」が少なくなり、登場人物が増えて、その会話が主要になる。「猫の視点」が少なくなったのが残念だな。彼らの会話は面白いのだが、時に冗長だったりもするし。

「1」とそれ以降は、大きなギャップを感じたな。「2」以降では、漱石の思想、社会に対する批判が強く押し出されているし。いや、それはそれで、興味深いのだけど。

ちなみに、本書は青空文庫でも読める。