『Julie of the Wolves』(Jean Craighead George著, ISBN:0064400581
「英語訳ではなく、原著を読みたいな」、と思っていて、どこかで薦められていた児童書を読んだ。例によって、辞書を引きつつ、なんとか。
物語は、3部構成。
アラスカのツンドラに、一人で、食料もなく、迷うエスキモーの少女。彼女の目的地は、はるかに遠い。彼女は、生き延びるために、父の言葉を胸に、狼との交流を試みる。しかし、それは死と隣り合わせの危険な行為・・・。
ついで、時をさかのぼり、彼女が現在の境遇に至るまでが語られる。父との、エスキモーとしての生活、西洋化の波、それによる父との別離、西洋への憧れとそれへ向けての脱出・・・。
そして、最終章。時は再び1章の後へ。ツンドラで生活し、狼たちと交流しつつ街への旅をするなかで、エスキモーと西洋の二つの価値観が彼女の中で葛藤する。自分は何?自分はどちらの人生を送る?

アラスカの厳しい自然の中での生活、西洋化により失われるエスキモーの文化・生活・魂、そのやるせなさ。堪能しました。
特に、ラスト。「おいおい、そういうオチか。甘すぎるけど、児童文学だからな。」などと思っていたら、見事にやられてしまった。現実を突きつけ、さらに彼女の未来を暗示する。見事。