njin2004-01-10

『われらの有人宇宙船』(松浦晋也著、ISBN:4785387580bk1
「再利用型の宇宙船は使い捨てよりもトータルで高くなる」、「本末転倒」、「設計の思想そのものに問題がある」。すなわち、使うたびに大規模な整備が必要である、何度も使う必要があるため全体を強固にしその分重くなる、翼などの“余計な”部分をわざわざ宇宙に持っていく必要がある、などなど。(これらの事実を知り、目からうろこを落としたのは、だいぶ前。『HAL』(あさりよしとお作)の前に、何か文章で読んだと思う。)
ところが、世の中では「再利用型こそが先端であり、進むべき道だ」と思われ(思わされ)ている。
そんな中、一人の研究者により提案され、同士の人々により育まれたのが「ふじ」構想。周りに惑わされることなく、自ら「何が正しいのか」を考え、計算することで導き出された答えが使い捨ての宇宙船となる。
本書は、その同士の一人である著者による本であり、これまでの宇宙船の歴史、ロケットの理論・限界、それを踏まえたさまざまな宇宙船の可能性、そして「ふじ」のシステム、宇宙産業、その可能性が述べられる。
「使い捨てカプセル型の欠点」と思われている部分に対して、ひとつひとつしっかりと反論し、さらにはスペースシャトルが落ち込んだ問題点を明らかにする部分は、初めて知る人には目からうろこでしょう。(なぜ指摘されるまで気付かなかったのか、と悔しい思いをしたものだ。)
また、オープンアーキテクチャの採用・民生品の積極使用や、得られた情報を元にフィードバックをかけながら次々と作っていくという方向性などを読むに、ぜひとも実現を、という気持ちが強くなる。
基本は、「自ら考えよう」で、その考えるための道具が提供される。もう一つは、「宇宙へ行きたいならそのために行動せよ」。著者にとって、この本はその行動の一つ。
ちなみに、巻末に「宇宙開発に関する書籍」があって、特に「日本の小説・コミック等」は、なぜかほとんど読んでいるものだったのだが、そのなかの『まんがサイエンス』と『HAL』の解説が笑える。方や「あなたが人の親であるならば、子どもに買い与えるべきシリーズ」、方や「あなたが人の親であるならば、間違っても子どもに買い与えるべきではないシリーズ」。私は、もちろん両方愛してます。