njin2004-01-15

あなたの人生の物語』(テッド・チャン著、浅倉久志他訳、ISBN:4150114587bk1
著者、テッド・チャンの短編集。
幅広いですね。ファンタジーからハードなものまで。ところが、ファンタジーに科学技術への警鐘が入っていたりして。どれも、見事。
お気に入りは、「数学の真理と美を信じる女性数学研究者の自らの手で発見した矛盾による苦悩、そしてその夫の思いとの交錯」、『ゼロで割る』。「人類とはまったく異なる手順で世界を認識するエイリアンとのコンタクトを通じ、自らも世界認識を変容する女性言語学者、彼女を通して語られる娘の人生」、『あなたの人生の物語』、「人の子孫が絶えることを知り、物質を文字で操る“銘字”によりそれを回避しようとする」『72文字(ファンタジーで、生殖技術、科学技術の功罪を明らかにするとは!)、「顔の美醜を認識する脳の“回路”を特異的に阻害することが可能になった時代、その処置を全校生徒が受けるか否かの論争について、さまざまな人の意見が述べられていく」『顔の美醜について』。
SFの楽しさとして、「ある技術が生まれたとき、それによって世界がどう変わるのか」(この方向の『顔の美醜について』は私の中で最高)とか、「異なる世界認識を突きつけ、あたりまえと思われている概念を揺さぶる」とか、いろいろ有るわけだけど、そういうのを、人の心をしっかり描きつつ述べられていますね。なるほど、素晴らしい。