『惑星学が解いた宇宙の謎』(井田茂著 洋泉社ISBN:4896916336)(bk1
これは、素晴らしい本!惑星形成の“秘密”に迫る科学の興奮が、見事に伝えられる。2002年発行ですね。これを読んでいたら、是非とも科学書ベストに投票していただろう。(どうしても投票したいという作品がないため、投票しなかった。まぁ、読んだ数自体少なかったのでね。)(おぉ、bk1に書評もついてないのか!こんなに素晴らしい本なのに!)


我々は、太陽系の惑星達、その振る舞いを古くから知っていた。それは、“宇宙”の中で“身近”であったため。だがしかし、近年に宇宙論が格段の進歩を遂げ、宇宙の形成、進化が明らかとなっていくにもかかわらず、惑星系の形成と進化は明らかとはなっていなかった。恒星とは違い、惑星は光を放たないため、太陽系外の惑星を観察することが不可能であり、研究する手法も存在しなかったため…。説があっても、それを実証・反駁することもなく、科学たり得なかった。


だがしかし、近年になり、状況は変わる。高速なコンピューターによるシミュレーション、光学機器の高性能・高精度化による観測の向上、衛星・惑星への観測機器の送り込み。これらの結果からうち立てられるモデル、それを裏付ける、あるいは矛盾する観測・シミュレーション、さらにはそれを取り込む新たなモデル……。


本書では、この激しいつばぜり合いと興奮が見事に表現されている。そして、その結果として明らかとなってきた“世界(太陽系)は、なぜこのような構造なのか”、“この構造(生命の誕生に都合の良い構造)は奇跡なのか、必然なのか”、が述べられる。さらには、現在どこまでが明らかとなっており、いま、何が問題となっているのか。


先に述べたように、この“惑星学”は、近年に大きく進展した領域であり、まさにその渦中にある著者ならでは、の興奮が伝わる一冊ですね。“惑星学”のみならず、“科学”という営みを伝える、素晴らしい本でした。


『一億個の地球』(ISBN:4000065718bk1)もおもしろかったけど、あちらはこれほど“科学の興奮”を伝えるものではなかったような。重なっている内容は多いのだけど、そう思って今まで読まなかったのは失敗であった。『異形の惑星』(ISBN:4140019662bk1)も読まねばなるまい。