ホミニッド-原人 (ハヤカワ文庫SF)『ホミニッド 原人』(ロバート・J・ソウヤー 著, 内田 昌之 訳、ハヤカワ文庫、ISBN:4150115001
 
 
ヒューマン -人類- (ハヤカワ文庫 SF (1520))『ヒューマン 人類』(ロバート・J・ソウヤー 著, 内田 昌之 訳、ハヤカワ文庫、ISBN:4150115206
 
 
最近、『ヒューマン』の方を読んだ(『ホミニッド』の方を読んだのは、だいぶ前だが)。
 
ネアンデルタール人が知性を持つヒトとして繁栄する世界。その世界の物理学者が、量子コンピュータの実験中、事故によりホモサピエンス(むろん彼等はそう呼ばないが)の世界へと送り込まれてしまう。
 
というわけで、物語は、ネアンデルタール人がヒトとなった“美しい”世界とホモサピエンスの野蛮で汚らしい世界の対比、そのネアンデルタール人ホモサピエンスの交流、それぞれの世界の混乱、ネアンデルタールホモサピエンスの分岐点には何が、等々が描かれてゆく。
 
ネタとして、『宇宙消失』や『皇帝の新しい心』などを思わせる大胆な“意識の秘密”や、『銃・病原菌・鉄』を思い出させる“人類進化のシミュレーション”、ネアンデルタール人の構築した社会、などなど。実にエキサイティングである。実に、楽しく読んだ。
 
それはともかく、作中で描かれるネアンデルタール人の世界なのだけど、実に“美しい”。これが、一般には批判される“美しさ”なのだけど(ちょー管理、監視社会なのだ、かつ自然一体型)、本作品ではこれを賛美し、ホモサピエンスの社会の汚さ、歪みを全面に押し出す作りとなっている。ソウヤーの理想なのかだろうか。
 
ホモサピエンスがあれをやろうとすると…、体制の強化のみに使用され、いっぱんじんには不幸な世界になるのは明らかなのだが。
 
ま、それはいい。
 
そういうわけで、ソウヤーお得意の“世界のシミュレート”がなされるわけだが、SFネタとしての“平行宇宙における知性の芽生え”も引っ張っている。3部作の最後では、とんでもない大風呂敷(『宇宙消失』を超えるような!?)を見ることができるかも、期待。